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《keep sleep, not deep sleep》は、2007年5月26日に芝浦ふ頭のロフト式のマンションの一室、マルギャラリーで発表された。この日は、橋本聡の作品集であり評論を収めた『Wake up. Black. Bear. 橋本聡』(WORKBOOK 1)の刊行発表日でもあり、会場には、この本が主要に扱う作品《Wake up. Black. Bear.》(2006)の記録映像、そしてダイスのシリーズの新作が展示された。

《Wake up. …》はギャラリー・オブジェクティヴ・コレラティヴで発表されたパフォーマンス/インスタレーション。可動式の壁と、壁面に投影された映像作品《Untitled [bury]》、鎖でギャラリーに繋がれた橋本自身によって構成される。橋本によってコントロールされる壁が、四角いギャラリーを手前と奥とに二分する敷居となって移動し、観客の導線と、映像の投影面に変化をもたらす。この作品では、空間構成と、観客と作者=橋本との関係が心理レベル/物理レベルで密接に影響し合うかたちで組織されている。

《keep sleep, not deep sleep》のパフォーマンス開始時間に合わせて集まった人たちが作品を鑑賞するなか、突如として、静かに、ギャラリー中央の壁際に立て掛けられた、白い布にくるまれた荷物のようなものが回転し直線上に解かれ、布がギャラリーを二分した。中に橋本が入っていたのだ。またその白い塊は、二つの作品のちょうど真ん中に位置していたため、それぞれを鑑賞する人々が分断されるかたちになった。明らかに意図してのことだろう。橋本のパフォーマンスのなかにあっては、《Wake up. …》で予習したとおり(と言ってよければ)、観客一人ひとりの行動(この場合ポジショニング)が即何らかの立場をとることを迫られるのだ。

そして、橋本が固定した布の下に横たわり、布の一方の側に赤いペンキ、もう一方の側に青いペンキを塗るなどのアクションをはじめた。そうした主に布へのアプローチが約一時間続くあいだ、終始橋本は布を境に一方の側に属し、もう一方の領域には手や脚だけが投げ出される恰好になっていた。
観客もまた布に隔てられた後は、どちらか一方の側からしか橋本の行動を観察できない状況となる。そこでは、目の前で行なわれている光景が、つねにもう一方の側から観察されている事実に引き裂かれることになる。その効果は、単純に布で遮断されていることに加えて、両側から注視する観客の双方が、視覚など情報の欠落を埋めようと、もう一方に知覚されている光景を想像する作用によってもたらされる。布を隔てた者同士は終わりまで別々の光景を見ていたにもかかわらず、互いがどちらか一方の立場しか取り得ないことにおいて、そして互いの像を想像上で補完するべく働き合うことにおいて、その条件を共有していたのではないか。


《三面体ダイス(asymmetry)》《三面体ダイス(symmetry)》。前掲書に掲載。

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keep sleep, not deep sleep
橋本聡
パフォーマンス/インスタレーション
2007年5月26日 18:00-
maru gallery

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by workbook | 2008-03-31 03:16 | text
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